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フランス語で「正方形」美しい四角!エルメスのカレ
2019年12月27日
由来・歴史
バーキンやケリーと同様に今やメゾンのアイコニックなアイテムとして君臨している、エルメスのスカーフ『カレ』。フランス語で正方形という意味を持っています。
サック・ア・クロア(現在のケリー)が登場した2年後の1937年に初のカレが誕生しました。
その初代のカレは、エルメス四代目社長であるロベール・デュマ氏が集めていた1830年代のゲーム盤から着想を得て描かれた”オムニバスと白い貴婦人のゲーム”という一枚です。
また、2018年春夏コレクションには、この柄を元にして描かれた”オムニバスゲーム・リミックス”というタイトルの新作も登場しました。
ちなみに、このゲーム盤本体は非公開ながら存在しているパリ第一号店の上階にあるミュージアムに飾られています。
そしてカレには柄ごとにストーリーがあり、1枚ずつ名前がつけられていることでも有名です。例えば、歴史に残る人物やエルメス博物館に所蔵されている由緒正しき物、歴史上の事実などが永遠の美として美しく描かれています。
そんなカレが誕生してから80年以上が経った現在も、カレが産まれた地であり、シルクの名産地としても有名なフランス第2の都市リヨンで作りだされています。
現在はエルメス グループである「HTH(エルメス テキスタイル ホールディング)」はリヨンだけにとどまらず、フランス最大のテキスタイルカンパニーとして発展。
カレやネクタイなどエルメスのテキスタイル製品の製版からプリント、縫製など各専門の7つの工房からなっており、リヨン近郊、パリ周辺、そしてリモージュに位置しています。
重要となる原画は細密に描かれ、リヨンの工房に送られます。カラリストが原画を元に配色を決定して染料を調合しますが、その染料を混ぜ合わすのも大部分が手作業で行われています。そして原画を元に色ごとにトレース。つまり、一枚の中に僅かな色の違いでも、例えば30色使っていれば、30枚の製版をするわけです。複雑な柄の場合は約2000時間程度かかることもあるそうです。
製版して色を何重にも重ねていく伝統的なシルクスクリーンと呼ばれる手法は「テクニック ア ラ リヨネ―ズ」とも呼ばれており、非常に手間を要する作業のため、この手法を採用している工房は激減しているが、エルメスではこの手法を現在も採用しています。最新技術によりオートメ化しつつも、熟練職人が厳しく管理し丁寧に1枚ごとにプリントされています。
たった一枚を生み出すのに数百、数千時間を費やすこの細密な作業から数々の工程を経てシルクに絵柄のプリントをし、最後に手作業で縁を縢って完成となります。この作業もまた、カレの縁を指でくるりと巻き込みながら縢っていくという細やかな技術で、熟練の職人でも1枚30~45分ほどを要するそう。
最新の技術を取り入れる柔軟さも兼ね備えながら、伝統的手法を守るという部分にも徹底的なこだわりを貫くエルメスが作るスカーフ『カレ』は、最高の品質とアートと言っても過言ではない美しさで心を豊かにしてくれるアイテムです。
現在5サイズ展開のカレ。初めてのカレは90からがオススメなワケ
カレといえば現在も最も多く生産されているサイズ「カレ90」ですが、1937年、初めてカレが登場した時からこの基本サイズ「90×90cm」は変わっていません。
このサイズになったのにはちゃんと理由があるのをご存知でしょうか?
肩からかけるのはもちろん、首に巻いたり、ヘアバンドや帽子のようなヘッドアクセとして使ったり、ベルトとしても使える、そんな多様な使い方をするのにマストなサイズなのが”90cmの正方形”だということから生まれたんだそう。なので、ファーストカレなら90をチョイスするのが無難かもしれません。
現在ではカレ90以外にもカレの中で最も小さい、スモールと言われる『カレ45(45×45cm)』
カレ45 スカーフ フォーブル24番地のクリスマス シルク100% ベージュ系
『カレ55(55×55cm)』、90より若干小さめの『カレ70(70×70cm)』、
カレ70 スカーフ SUITE ET POURSUITE オレンジ シルク100%
そしてカレ最大サイズとなる『カレ140(140×140cm)』の5サイズ展開となっています。
カレ140 ジェアン 大判スカーフ ショール カシミア65 シルク35 アイテム柄 赤 黒 茶系
カレスモールは首元や手首に巻いて、ちょこっと軽めのアクセントにもなりますし、ポケットチーフやバッグの中を隠すために掛けたり、ミニサイズならではの楽しみ方が。
90だと少しボリュームがありすぎるかな…と感じる方にはカレ70が良いかもしれませんが、柄の多さは圧倒的に少なくなるのでサイズと柄、どちら優先するかと言う点では悩みどころになるかもしれませんね。
140はストールやマフラー代わりとして使えるボリュームと存在感です。
素材、カラー、利用シーン
『1枚ごとに無限に広がる物語を秘めたカレだからこそ楽しみ方も自由自在』
カレの素材で最も多く用いられているのは、シルクツイル(ツイル100%)ですが、その他にもシルクをメインとした素材が複数あります。
まず、注目したいのが2018年秋冬コレクションで新しく登場した『カレ ウォッシュ』というもの。仕上げ工程の際、職人による手作業でシルク100%のカレにウォッシュ加工を施した素材。
仕上がりは薄っすらと白みがかったマットな色味で、まるでベルベットのような滑らかな肌ざわり。
また、自宅でのお洗濯が可能な点も、うっかりメイクなどで汚してしまったりした時などに直ぐに洗えたりするので、それも嬉しいポイントですね。
職人の手作業で施される加工なので、一枚ごとに僅かなサイズや仕上がりに異なることもあるそうで、そんな手作り感も味となり、魅力の一つなのではないでしょうか。
サイズ140×140 cmの大判サイズ、”カレ・ジェアン”に多く用いられているのがカシミア70%・シルク30%で織られている『カシミアシルク』です。140でシルクツイルのものもありますが、こちらはまたひと味違った、しなやかでサラっとした肌ざわり、かつ暖かみも感じられ、ストールやマフラー代わりとしてもぴったりの素材。
そしてカレ・ジェアンには『シルクモスリン』というタイプも。もちろんシルク100%。
フワっと軽く透明感があり、透き通る薄さでありながら、高発色な生地をつくるのは非常に高い技術がなければなしえないのでエルメスの技術力の高さがまた実感できる一品と言えるでしょう。
とにかく軽くてコンパクトにもなるので、襟元が涼しくなった時や、アフターファイブのちょっとした気分転換のコーデなどに持ち歩くにも重宝しそうです。
スモールのカレ55にも、シルクツイル(ツイル100%)のタイプとカシミアシルク(カシミア 70%シルク 30%)のタイプがあり、バンダナタイプとして登場したモデルですので、アクセサリーとしての使用用途やお好みでテクスチャーの違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
素材はシルクツイル100%ですが『カレ アイライナー90』というモデルも登場。こちらは
まるでアイライナーのように繊細で細いラインをツイル上にプリント。ストライプやチェックなどが重なり合うことで印象が変わった2面性を1枚で楽しめる雰囲気が新しい。
そのほか、タトゥーを連想させる単色でのプリントがシックな色味ながらもインパクト十分の
『カレ タトゥアージュ 90』などもあります。シルクツイル100%の他に、”シルクツイル・アベイユシルク100%”というタイプがあり、これはミツバチ(アベイユ)の柄が全体に均一に織り込まれた生地です。
またカラーについても、前述の通り、染料の配合も大部分が手作業で行われているというこだわりのカレ。
ほんの僅かなカラーの変化で印象は全く異なることから、新作のカレを作る際は、同一柄ごとに、およそ10種類程度のカラー違いを作り、そこから商品化まで何度も繰り返し試作をしているそう。
また、長方形よりも、正方形へデザインを落とし込むのは何倍もの技術が必要とされるうえ、カレには、1つの柄ごとにストーリーがあるので、それらを限られたスペースの中で表現しなくてはなりません。ですのでカラーの選択と配色はとても重要とされています。
もはやアートと言っても過言ではないカレ。ファッションアイテムとしてはもちろんですが、
インテリアとして額に入れて飾るのも素敵な使い方のひとつですね。
エルメスのディレクターも、カレはモードのアクセサリーという付属的なモノではなく、
カレ自体が個性を持っていて、主張する存在であると語っています。
カレを主役にしたコーデを楽しんだり、記念日毎にコレクションしたり、はたまた、特別な日に身に着けることで、まるでアルバム代わりのようにカレに思い出を重ねていったり、様々な形で長きに渡って愛用することで、より一層愛着がうまれることでしょう。
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